「楽なの反対!」
という健に続いて、香子も
「木悪くないモン!同じく反対、反対!!」
と言って右手をあげた。
「しょうがないですね…私も働きますか…高校生にこんな労働させるなんて、間違ってますね。」
言葉とは裏腹に平然と言ってのけると、繁良は静かに目を閉じた。
「行っくよー!健!!」
香子と健は、繁良とは反対方向に走りだした。繁良は常人とはことなり、方丈の場所を感知すること ができるのだ。繁良が木にトリツイた方丈の位置を感知するまで、香子と健は木の気(シャレにあらず) を繁良からそらさなくてはならない。健は次々と地面に突き刺さる木の枝をかわしながら、
「ろおりんぐそばっとおおおおお!」
と叫んで木に飛びかかるが、枝にはじかれ宙を飛ぶ。
「ああ〜失敗ぃ〜」
健はブロック塀に叩きつけられ星になる一歩手前で、ブロック塀に両足で着地(?)した。その時、 一人の背の高い細身の人間が、健の横を通りすぎた。
「へ?」
少し茶色がかったストレートの髪は腰よりも下まであり、首の所で無造作に束ねられている。ライダー が着るようなレザージャケットにジーンズ。顔は中性的ないい男といった感じである。
「狼!?」
香子が叫んだ。コードネーム「狼(ウルフ)」、健達とは違い政府非公認のエージェントで、特に方丈 がからんだ事件には必ず現われるという、謎の人物である。健達とも方丈をめぐって何度も争って おり、その勝敗は五分五分といったところである。
狼は香子に、
「危ないよ。」
というとそのまま上に跳躍した。