「楽なの賛成!」
という健の答えを聞くとすぐ、繁良は香子に合図を送った。
「了解〜〜〜!!行くよ!健!!」
香子は地面を蹴ると、大木に向かって大きく跳躍した。右手を一振りすると、鈍色に輝く 鉄パイプが現れる。その伸縮自在の鉄パイプが香子の武器なのである。
自分に向かってくる香子に気付いた大木は、声にならない咆哮をあげて、全ての枝を香子に 向けた。
「健!お願い!」
「だあああああ!!!」
香子に向かって一直線に飛んでいく木の枝を、健が打ち払い続ける。頭脳担当の繁良、体力担当の 健、そして、筋力担当の香子が鉄パイプを振り上げる。
「往生しろ〜〜〜!!」
香子の鉄パイプが、大木をてっ辺から引き裂いていく。けたたましい音を響かせて裂ける大木は 声にならない声で断末魔の悲鳴を上げた。そして、その場に崩れ落ちたのであった。
「…生きていたかった…そう言ってた気がするね。」
健はぽつりとつぶやいた。
「まあ、人間の勝手で切り倒されそうになったんですからね。」
繁良は冷静に告げた。
「かわいそうなことしたなあ…悪いのは人間なのにね…」
自分が引導を渡したこともあり、香子は決まりが悪そうだ。
「まあ、こうしないとこっちがやられてましたからね、仕方ないでしょう。」
繁良はあくまで冷静なままだ。真っ二つに裂けた大木のそばには、きれいな透明の玉が落ちている。 しかし、その透明な玉の真ん中には一本の白い筋、傷が入っていた。この玉こそが方丈である。 繁良は健にその玉を拾うよう、うながそうとしたその時、1台の黒い中型バイクが彼ら3人めがけて すさまじいスピードで向かってきた。