西島高校

「危ない!!」

健の声と同時に3人はその場から後ろに飛び退いた。バイクは3人が元いた位置に停車すると エンジンをかけたまま、スタンドを下ろした。

「どーも。お久し振り。」

フルフェイスのシールドを革のグローブをはめた手ではねあげバイクからおりたのは、背の高い 細身の人間だった。レザージャケットにジーンズ、メットからは一重の切れ長の目がのぞいていた。

「…狼!!」

香子と健がきれいにハモる。コードネーム「狼(ウルフ)」、健達とは違い政府非公認のエージェント で、特に方丈がからんだ事件には必ず現われるという、謎の人物である。健達とも方丈をめぐって 何度も争っており、その勝敗は五分五分といったところである。

「…!!」

香子は無言で気合を入れると、予備動作もなく鉄パイプで殴りかかった。

「いきなり、これかい?」

語尾にかすかな笑い声が含まれていた。狼はすっと一歩踏みこむと、鉄パイプを握っている香子の手の 手首を左手刀ではねあげ、そのまま手首に指をかけた。

「くっ!」

本来曲がるはずのない方向に腕をひねられた香子は、腕を守るために自ら宙に飛ぶと受身をとった。 続く攻撃はなく、明かに相手が手加減しているのが分かる。

 狼は、靴で足元の方丈を真上に蹴り上げると、左手で受け取った。

「では、失礼するよ。」

「行かせるかあ!」

叫びながら中段めがけて殴りかかった健の手を、一歩外に出てかわしながら左手でつかむ。そして 右の足で無防備になった健の腹を蹴り上げる。

「ぐっ…」

のけぞった健の腕をそのまま勢いよく円を描くように回す。

「はれ?」

「ちょっと、こっち来るなあ!!」

香子の静止も意味をなさず、健は宙を飛び香子の上に投げ飛ばされた。

「では、今度こそ本当に失礼!」

狼はバイクをまたぐと悠々と走り去って行った。

「健のぼけぇ!」

地面に座り込んだままにしては見事なひねりを加えて、香子が健に右ストレートを放つ。

「しど〜い」

と叫びながら、またしても健は地面の上を転げて行くのであった…。しかしそこは体力馬鹿の健、 次の瞬間には何のダメージをも受けていないかのような平然とした顔で、

「持ってかれちゃったねえ、繁ちゃん。」

と普通に話すあたりがさすがである。

「まあ、あの方丈壊れてましたからね。持ってかれても別に構わないですよ。」

「うそお!先に言ってよー!」

と見事にハモった健と香子に、

「言う前に飛びかかって行ったのは、あなた達でしょうが…」

と、相変わらず冷たい口調で繁良は答えるのであった…。

 冬の冷たい風が、空き地を走り抜けていった。

GAME OVER

SAVEしたところから

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更新日:2003年9月8日
管理人:CHI