「ここですよ。」
三人は、扉の前で足を止めた。途中何人かに出くわしたりもしたが、全てアーミアの力によって 事無きを得ていた。
「おそらく、中で待ち構えていると思いますよ。カメラがしかけられていないとは思えませんからね。」
ヒューイは眼鏡の位置を直した。
「まあ、ここまで来てしまったんだから、大人しく入りましょうかね。」
オフィサーは緊張感無く、大きな扉を開けて、中に入っていった。部屋の中は昼間と言うのに 真っ暗であった。と、突然部屋の明かりがともる。
「何か用かね?ヒューイ君。」
奥のデスクに目付きの鋭い男が座っていた。その周りを六人の男たちが銃を構えて三人に狙いを つけている。
「ガスパー…あなたこそ何かご用ですか?あんなできそこないのカウンターに私の命を狙わせるなんて。」
ヒューイは目の前に座っている男を見つめて、静かに聞いた。
「まあ、君がじゃまになったということだよ。」
ガスパーがにやりと笑うと、青い髪のオフィサーがヒューイ達の前に進み出た。
「このD地区は、マザー側に協力するふりをして、マザーの様子を探っていたのでしょう。しかしあなたは、マザー勢力に勝てないとふみ、末端の人間を証拠隠滅のために消し始めた。このヒューイは、いわばスパイといったところですか?政府にばれる前にカウンターに依頼して口を封じようとしたんでしょうが…」
今までのお気楽公務員とは違う雰囲気にヒューイはまじまじと目の前の男を見つめた。
「貴様…何者だ?」
ガスパーが顔色を変えて、オフィサーを見た。
「第一層政府のエージェントだ。貴様の企みは全てばれている。本来なら、俺が出てくる任務でもないんだが、ヒューイを殺そうと言うのなら話は別だ。」
しがない公務員とは仮の姿、本来は政府直属のエージェントとして特殊な危険任務をこなすのが 彼の仕事なのである。青い髪のエージェントは眼鏡を取ると足元に捨てた。
「ユーシス!」
アーミアはもっていたソードを彼に投げると、ヒューイをかばって床に伏せた。ユーシスは空中で ソードを受け取り、そのまま六人の男に切りかかる。六人は慌ててユーシスに向けて銃を放とうとするが、銃身に何かがぶつかったために、その弾はユーシスにかすりもしない。次の瞬間、アーミアの手に スライサーが戻る。アーミアはユーシスにソードを投げると同時に肩からはずしたスライサーも 男達めがけて投げていたのだ。
「は!」
気合もろとも、ユーシスは男たちを切り伏せていく。おそらく男たちもそうとうの使い手だったのであろうが、ユーシスとは比較にもならない。六人の男とガスパーは静かに床に転がった。そして、 静寂が部屋を包む…